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トレーディング、Arts&Logic by 田中 雅

第IV部:損切りとシステム取引

第1章:損切り

2009/12/24

損切り大好きは良いことか?その調査。

損切り大好きという人は非常に少ない。逆に損切り大嫌いと言う人は多い。損切りに惚れ込むと「損失と心中する」と言うことにもなりかねないが、一方トレーディングで成功するには、収益を伸ばすか、損失を減らすか、もしくはその両方が実現しなければならないので、損失を減らす為の努力と工夫にトレーディング時間の半分を割いてもおかしくない。

ではどのような損切りが良いかと言うと単純には答えられないので、本などを読んでも意外と詳しくは載っていないのが現状である。

次のように極端な例をシミュレーション検証してみる。取引が適度に難しく、適度に収益性も高い、要するに普通のマーケットと言えるドル円を取引してみる。

まず損切りや利食いを一切しないで、常時マーケットでポジションを取り、売買をひっくり返しながらトレードするタイプの取引システムの調査をしてみる。それに対して積極的な損切りを行うという方針を組み入れた全く同じストラテジーで再調査して、それぞれの収益を比較する。

ドル円順張りシステムで損切りを検証

まず、私が開発した常時ポジションを保持するリバーサル(=ドテン)・ストラテジー72種のうち最も代表的な手法18種類を選択し、ドル円を取引する。データが多すぎると図表にしても分かり難いからだ。一つのストラテジーにつきベスト収益を上げる20のパラメータを探索し、良いものから列挙する。それを図示したのが次図の青色の点である。20のベスト収益が隣り合わせで組になっており、18のストラテジー群が見て取れる。

青色の点の高さが収益性の高さを示す。また最大ドローダウンが図の最下部にピンク色の点で示されている。最大ドローダウンとは、トレーディング期間中にそのシステムが蒙った、収益ピークから収益底入れまでの最大の収益落ち込み幅の事である。

損切り無しのシステム取引VS積極損切り付きの比較
(画像:損切り無しのシステム取引VS積極損切り付きの比較)

この図によると18のストラテジーのうち2つが傑出しており、1つが際立って見劣りがすることが分かる。そこでこの優等生システム二つと劣等生一つに積極的な損切りを導入するとどうなるのかに興味が湧く。

それぞれのストラテジーに積極的損切りを導入して再調査する。この際積極的な損切りとしては、「東京寄り付き時に損が発生していれば直ちに切る」という調査用の単純ルールを適用した。東京寄り付きのデータが無ければ、NY引け値で損が発生していれば引け値で切るというルールでも、ほとんど同じ結果となる。同じようにベスト20の結果を探索したものを今度は、赤い点で青い線と同じX軸上に列挙した。

上図最下部の黒い四角形がそのドローダウンを表す。ドローダウンは小さいほうが望ましいのだが、ピンクの「損切り無し」よりも確かに少なくなっている。これは大変に意味のある成果である。

上図の例に限っては、優等生グループを追加の積極損切りで改善することは出来ず、改悪となっている。しかし極端に見劣りがする劣等生とその他幾つかのストラテジーに対しては顕著な改善が見られた。

一般的に言い換えると次のようになる。

  1. 非常に良いシステムは特に追加の損切りを必要としないし、結果も悪くなる事が多い。
  2. 悪いシステムは、改善されて普通のシステムになることが多い。
  3. 普通のシステムで損切りによって絶対収益が向上したのは18のうちたった4つ。
  4. ドローダウンは損切りを行うことで概ね全てのストラテジーで小さくなる。

つまり損切りをすることで可も無く不可も無く、ドローダウンは小さいシステムになりやすいという事になる。多くの普通人にとっては、「損切りは友」なのだ。

損切りは順張り

ここで気をつけなければいけないのは、非常に良いシステムは積極的な損切りを追加導入するとパーフォーマンスが落ちると言う事の意味である。一見損切りが悪いことのように理解しそうだがそうではない。ここまで検証しているシステムは全て順張りのブレークアウトで、トレンドにフォローして行く。優れたシステムが出来上がった場合には、順張りで得られる潜在収益の限界を、適正化によって既に獲得しているはずである。

そのようなシステムに対して、やはり「順張り」である別の損切りを追加しても収益が上がらないというのは当然なことなのだ。従って、順張りのシステムやトレーダーが飛躍的に収益特性を向上させられるとすると、それは順張りの技巧の追加によるものではなく、他の技巧、恐らくは逆張りの技巧を追加するということなのだろうと推察がつく。つまり損切りではなく、利食いの事なのだが、そのことについては次章で述べる。

システム取引に限らず自由裁量のトレーダーについても、一般論として次のような事が言える。

  1. 優れたエントリー手法を持つ取引者は、そのエントリールールが同時に理想的な損切りルールとなっているので、追加の積極的な損切りを必要としない。
  2. しかし特に優れた手法を持っていない場合には、積極タイプの損切りをすることでパーフォーマンスを少し上げられる可能性が十分にある。
  3. 損切りをすると収益機会も失われるが、巨額損失は避けることが出来るので、ドローダウンが小さくなり、滑らかな穏やかな収益曲線を得ることが出来る。運用破綻劇の多くは巨大損失を切ることが出来なかった事で発生するので、損切りは最後の命綱の役目を果たしていることは確かだ。損切りで損を避けることは出来ない。しかし巨額損失は避けることが出来る。頓死を避けることがどれほど重要かは、幾ら強調しても強調しすぎることは無い。

次にブレークアウト・システムが苦手とするクロス円で同じ事を検証してみると面白いことが判明する。

ユーロ円のシステム取引:損切り無しVS損切り付き
(画像:ユーロ円のシステム取引:損切り無しVS損切り付き)

ユーロ円の場合には、追加の積極損切りを導入することで殆ど全てのストラテジーの収益が改善増加することが分かる。何故なのだろうか。ユーロ円の価格変動特性は、ドル円と全く違うからだ。私の見解ではユーロ円の価格変動はその大部分が、じり高局面と大中小の暴落局面の組み合わせで出来ている。この両方を一つの単純順張りストラテジーでこなす事が非常に難しい。

ところで、既に良いユーロ円順張りシステムを持っている場合には、上図のトップクラスの2例でも再び明らかなように、損切り大好きになったところでやはり収益の改善は全く望めない。トップシステムはある意味ではギリギリの極限収益を取り尽くしているので簡単には改善できないという事が分かる。ユーロ円のトップシステムは、私の経験では理想的な損切り方法を発見することが極端に難しい。

アラジンの魔法のランプ

私は93年に米国の運用競技会でダブル入賞して以来、運用者の国際会議に出席するようになった。あらかじめ出席者の名簿は参加者に配られるので、会議中に貴殿と面会したいので予定を決めてほしいという申し込みが最初のロンドン大会から幾つか入って来た。運用タレント探しのヘッド・ハンターが、我社の運用者探しのテスト面接を受けないかと誘ってくれるわけである。「何日の何時に、(会議場となった超高級ホテルの)スイートルーム何号で貴殿を待っている」という文面のファックスが届く。最初の招待者の名前は忘れる事も無い「アラジン・アブガザレ」。アラジンとは中東系の人なのだろう。ふうむ、スイートルームとは豪勢な、どんな部屋なのだろう??中東系の人と会うのは初めての体験で、まるでアラビアン・ナイトの王様からの招待を受けた様な気分になった。

面接ではトレーディング・ロジックとかありきたりの質問が浴びせられて、最後にこう聞かれた。「君の損切り原理は如何なるものですか?」
「はい、ミスター・アブガザレ、私の損切り原理は、、、」
「ああタナカ・サン、アラジンと呼んでください。」
「はい、アラジン。私はその時々の市況に応じて毎日ダイナミックな計算をして最適解を得て損を切ります。」
「ほう、それは興味深い。しかし私が聞いているのは、君が幾ら損をしたら損を切るのかと言う質問なのです。」
「ですから、それはその時の市況と計算に応じて違ってくるので何とも言えません。」
「ではタナカ・サン、事前にはその額は分からないのですね。」
「はい、分かりません。」
そうするとアラジンはゲラゲラ笑い出して、「あはは、何でもいいから資産の3%とか具体的に言いなさい」
「だってそれは決まっていないので、今決めろといわれても。。」
「OK、じゃあ、決まってから又出直してください。Thank you. Have a nice day。」

私は損切りをしないと言っているわけでもないし、それに、判らないのなら何でもいいから適当に損切り額を決めた方が良いなどと、ちょっとご都合的だし詭弁ではないか?少しムカついて面接を後にした。しかしこの体験で直ぐに悟ったのだが、損切り額を分かり易く事前に決定しておく事は、運用業界の会員証を獲得する為の必要条件の一つであったわけだ。固定幅損切りとは、運用業界という生態系の生き残り策の一つであり、営業上の要求でもあったのだ。それ以降、私は自分のシステムに固定幅の損切りを追加するようになった。

経験では、日足を使って1日1度だけ注文を入れるタイプの通貨取引の固定幅損切り額は200ピップ(通貨取引でよく使われる言い方で200チックのこと)から500ピップ程度に収まっている。500ピップ以上の損切りを要求するようなシステムは採用しないようになった。実際これを知ることで、例えばリーマンショック時のような大乱高下時に全てのシステムが同時にやられたときに、自分がどの程度の最大損をするかあらかじめ知ることが出来る。資産管理と言う面ではやはり役に立っているといえる。

それ以来、私は損切りにあだ名を付けるようになった。もちろんそれは「アラジンの魔法のランプ」である。アラジンは結局運用はさせてくれなかったのだが、その代わりに魔法を教えてくれた。

固定幅損切り

最も一般に使われている固定幅の損切りは、驚くほど単純なものが多い。冒頭から紹介したような、損をしたら直ぐに切るようなタイプは非常に少なく、事前に定められた固定幅の最大損失予定額までは頑張り、到達したら無条件に切るという方針で設定されることが多い。以下、歴史的に見て古いものから掲げていく。

価格幅による損切り。エントリーから例えば3円離したところに損切りを置く。
価格水準による損切り。エントリー時のレートの例えば3%をエントリーから離して損切りを置く。
固定ボラティリティーによる損切り。
 例えば日足価格変動標準偏差の3倍離したところに置く。
 あるいは、日足レンジのX日平均の例えば3倍離したところに置く。
 あるいは、ボリンジャーバンドが規定する標準偏差の3倍離したところに置く。
(以上、3と言う数値は無意味に設定した一つの例である)
以上全ての例において、ポジションを取った瞬間に固定損切りストップを決定し、後はこの損切りを変えない。

これとは別に、連日ボラティリティー・ブレークアウト・ストラテジーによる動的な損切り(同時にエントリーでもある)も別途計算し、これら二つの損切りの「近い方」を市場に入力する。つまり動的な損切りは固定損切りストップを超過することが絶対に無い様に計算するわけだ。これで該当取引の最大損失を事前に決めてしまうという仕組みが出来上がる。

通常は動的な損切りのほうが近いので、そちらが採用されるが、たまに損が拡大して固定損切りが執行される事がある。この損切り水準自体は、市況には関係なく、勝手に事前に決めた固定水準であるがゆえに、時には不都合なロジックとなる事すらある。その時の市況を力学的に反映する理想解とは言えないこともある。それらを全て犠牲にしてでも、あらかじめ最大損失を固定して決めておきたいとする硬い決意と要求をもって市場に臨むのである。

合理性はともかく、これは古き良き時代からの伝統であり、古臭い知恵には従っておくのが一番だ。

問題はその固定損切り幅をどうやって計算するかである。

固定損切り幅の決定

絶対価格幅による損切り幅

これは例えば損切りの絶対幅を決め(例えばドル円の1円)、エントリーから離した所に固定損切りを設定する。昔のシステム取引ではもっぱらこの方式が一般的だった。

その計算であるが、最適な解はシミュレーションソフトで求めるのが一番簡単なので、私はシミュレーションで求める。優秀なボラティリティー・ブレークアウトを既に開発してそれに固定損切りを追加する場合には、固定損切りは個々の取引の最大損失より少し多きめが最適解となることが多い。固定損切りが打たれる確率は、エントリーの優秀さに依存する。エントリーが良ければ損切りに依存する機会は小さくなる。良いお付き合いをしているのと同じで、あえて別れ話に持ち込む必要がない。

普通に良くできたシステムでは、固定損切りが打たれる確率はかなり低い。それより先にボラティリティー・ブレークアウトで計算した損切りが打たれてしまうからだ。だから固定損切りの為に精緻な探索や研究をする必要がない。

自由裁量トレーディングの場合には、シミュレーションで解を求めることは難しい。自由裁量ストラテジーはブラックボックスになっていることが多く、また曖昧度(即ち自由度)が高いので、それを数式化したストラテジーには換算できないので、シミュレーションが出来ないのである。

そこで殆どの人はテクニカル分析によって合理的なストップポイントをその都度探し出し、そこにストップを置くわけである。

価格水準で決める損切り幅

明らかに200円に於ける2円の損切りと、100円における2円の損切りでは、全く打たれる確率が異なる。同じなのは損失額のみである。この欠点を重視するなら、絶対額ではなく価格水準から計算したパーセント比率損切りを使う。例えばそれが2%である場合にはドル円が100円レートの時、損切り幅は2円となるが、200円の場合には4円となる。絶対値損切りよりは合理的な計算方法である。にもかかわらず、おそらく実際に使用されている度合いは絶対額損切りより少ないと推察する。人は、損に関しては合理性よりも絶対的損失額、即ち懐の痛み具合を最優先して考える習性があるのだろう。

平均レンジから求めた損切り幅

現在プロのシステム・トレーダーの間で最も広く使われているのが、恐らくこの方式だろう。直近のレンジ・ボラティリティーを参照して計算するが故に、さまざまな計算上のメリットがあり、金融工学風に評価して進化したタイプの損切りを計算することが出来る。計算はとても簡単で、直近のAverage True Range(真の平均レンジ)の何倍かを損切り幅として使う。

典型的な実例を既に第Ⅲ部第3章「順張り取引の行動計画」で述べた。リチャード・デニスが教えたタートル・ルールの損切りである。20営業日間の日足レンジの平均を求めそれをNと名付ける。その2倍をもって固定損切り幅とする。20営業日とは1ヶ月のことを指す。

平均レンジを計算する際は、ギャップをレンジの一部と見做す方式を採用した。ウエルズ・ワイルダーが考案したAverage True Rangeの事である。通貨取引の場合には、月曜日のオセアニア寄り付き以外は、ギャップが発生しないのが普通なので余り気にする必要が無いが、株式指数などでは大変な差が発生する。

例えばドル円の場合、非常に高頻度で日足の平均レンジが1円近辺となることがある。筆者は一度セミナーの為に1年の平均を計算した時、それがぴったり1円だったという事を見出して驚いたことがある。20日平均レンジのイメージを次に掲げた。下図の上部がドル円の日足バーチャート。下部が平均レンジの推移グラフである。平均レンジは5つのグラフの最上部青色の折れ線で示してある。その他のチャートは日足バーの構成部分をそれぞれバラバラに分解し平均計算して提示したもので、実にさまざまな用途に使うことが出来る。

下図はリーマンショックの最中、平均レンジは100銭から300銭近くまで暴騰し、その後このチャートの最後となる2009年1月には150銭ほどで推移していることが判明する。市況の落ち着いた2009年9月に再び平均値は100銭に復帰した。この事から、リーマンショックの最中は通常の少なくとも3倍の距離を離して損切りストップを置くべきであったということが分かる。すなわちタートル風のストップであれば、リーマンショックの最中で6円程度、今でも3円程度である。

単純に経験則に照らし合わせても、これ等のタートル・ストップはかなり良いものだと、直感的に評価できるだろう。この事が分かっただけでも非常な役に立ったはずで、現在知られているストップ計算としてはやはり最良の手法の一つと評価できる。

チャート:日足平均レンジ幅の推移
(画像:チャート:日足平均レンジ幅の推移、ドル円で単位は銭)

問題は、その倍数を如何にして求めるかだが、やはりシステム・シミュレーションで求めるのが一番簡単で、信頼性も高いだろう。適正化をしないのであれば、何らかの合理的な根拠で2とか3とか決めるしかない。そうして求められた倍数の意味については本章の最後の部分で興味深い検討をして見る。つまり、何と言っても魅力的なのは、こうして求めたストップは、どの程度打たれる確率があるのかある程度の計算が可能であり、打たれる風景を確率イメージとして心の中に描くことが出来るのだ。

ボリンジャーバンドの標準偏差から求めた損切り

ボリンジャーバンドは米国西部の著名なアナリスト・トレーダーであるボリンジャーが考案した標準偏差バンドのことである。オプション計算で使う価格変動の標準偏差ではなく、地理的な価格分散標準偏差を使用する。筆者は時間足取引の損切り計算にこれを使うことが多い。損切り幅が目前のチャートではっきりとイメージ化されているので、地理的に何処で損が切られるのか思い浮かべることが出来るという利点がある。
特に時間足のような敏速な取引には、精緻な計算を時間を掛けてやるよりは、映像化された標準偏差バンドの幅を根拠に、その何倍で損切りするという風に即決するのである。
その利点は直近の時間足の地理的分散ボラティリティーを参照していることにある。

バンドの位置そのものに沿ってストップを配置するという意味ではなく、バンドの幅をストップ抜け幅計算に利用する。

私のデイ・トレーディングの損切りには、3種類の時間足ストップ手法が混用されているが、そのうちの一つがこれである。下図は、同じくドル円の日足に掛けた21日間のボリンジャーバンドである。21日間のボリンジャーバンドは「日替わりの月足」というイメージで捕らえれと良いだろう。

チャート:21日ボリンジャーバンド
(画像:チャート:21日ボリンジャーバンド)

例えば2標準偏差を損切りに使うとすると、この図では既に2標準偏差幅がバンドの幅として図示されているので、どの辺りに自分の損切りがあるのかイメージしやすい。従ってテクニカル分析と併用すれば、自由裁量の取引者にも役に立つことだろう。ボラティリティーが増加すると、損切りは自動的に遠くに設定されることになる。これが大きな利点である。

以上で明らかなように、現代的な損切りはボラティリティー計測に根拠を置くことが多い。確かにボラティリティーを参照して計算する損切りには大きなメリットがある。

とすると、ボラティリティー・ブレークアウト・システムはまさしくそのボラティリティー計算を根拠にエントリーとエグジット(手仕舞い)の計算をしているので、理想的な損切りアプローチが元々組み込まれていると言えるわけである。

損切りの遠近感

損切りの遠近感を得ることが出来れば非常に役立つだろう。特に自由裁量トレーダーにとっては興味あるテーマだろう。この損切りは近すぎるのではないか、遠すぎるのではないかという疑問に答えることが出来る。ドル円を例に取る。

ドル円日足の平均レンジを今仮に1円であるとする。今ドル円が純粋なランダム運動をして勝手に動き回っていると仮定した場合、1週間ではどの程度動くのだろうか?1ヶ月では?

逆に2円離したストップは無意味なランダム運動によって何時打たれる可能性があるのだろうか、4円ならどのくらい長持ちするのだろうか?

第II部と第III部の間に掲載した「間奏曲(1)リーマンブラザーズとの約束、アインシュタインの功績:ブラウン運動」にその答えがある。

ランダムに運動する個体は時間の平方根に比例して拡散していく。とするなら、ランダムに運動する個体が集合して形成する「レンジ」も時間の平方根に比例して拡大するのではないか、という仮説が成り立つ。この仮説が為替市場のデータでも正しいことは、次のように直ぐに証明できる。

もしこの仮説が正しければ、週足の平均レンジは日足の平均レンジの2.2倍程度になるはずだ。5営業日の5の平方根を解くと2.2余りになるからだ。
また月足の平均は日足の平均の4.6倍程度になるはずだ。21日営業日の平方根倍に比例するはずだからだ。
また月足は週足の約4倍の時間があるので月足は週足の2倍程度になるはずである。これは先ほど得た「2.2」と「4.6」の関係が約2倍であることからも推察が付く。
そこで、以上の仮説が正しいか、ドル円のデータをエクセルで調べてみるわけである。

これは大変に勉強になる調査なので是非ご自分でもやっていただきたいのだが、幸いなことに、前述の「平均レンジ幅推移」のチャートでそれを計算済みなので次に再度掲載する。

チャート:ドル円日足平均レンジ
(画像:チャート:ドル円日足平均レンジ、2008年8月18日=100銭)

都合の良いことにチャート上の昨年8月13日の少し後、8月18日に最上部の平均レンジを示す青色折れ線グラフが100銭=1円となっている。次にこの頃の週足平均レンジが仮説の期待通り2.2円前後になるかどうか週足を呼び出してみる。

チャート:ドル円週足平均レンジ
(画像:チャート:ドル円週足平均レンジ、2008年8月22日週=263銭)

8月22日週の平均週足レンジは263銭だった。やや高めだったがこれは偶然で、原則的に日足の2.2倍前後と言う比例関係は正しく保たれている。最後に、月足平均レンジが日足からの推定で4.6円前後、乃至は週足からの推定で5.26円前後に収まるかどうかを見てみる。

チャート:ドル円月足平均レンジ
(画像:チャート:ドル円月足平均レンジ、2008年8月=495銭)

上記月足の平均レンジは折れ線グラフ群最上部青色で、昨年度8月時点での21ヶ月平均は495銭だった。4.6円前後、乃至は5.26円前後という推測は当たっていたのである。当たっていない誤差部分が実はトレンド性向やボラティリティーの揺らぎ、ゆがみを表現していると気が付けば、当たっていない部分を探ることで更に有用な市場情報を取り出すことも出来る。これは最高に面白い調査である。

ここまで分かるとその応用は多岐多様にわたり、トレーダーの空想と幻想に応じて遊び回る事が出来る。損切り注文の遠近感も、実はこの期待値を物差しとして計ることが出来るのだ。

平均レンジが1円のドル円に、1円のストップを入れるとどうなるか?今日のレンジが1円であるとして、明日の到達範囲平均予想は2の平方根、1.414(一夜一夜ひとよひとよ、と読む)倍に広がっているはずである。3日目には(出発点を1とするので4日目と計算する)2円に広がっており、そして1週間では2.2円になる。

以上は平均幅を計測しているのに過ぎず、ストップ注文は平均幅ではなく平均予想に反して拡大したり縮小したり激変するその最大値で打たれるわけだから、この拡大イメージよりももっと厳しくなる。

この様に色々考えて、私のストップは、無意味な乱高下横ばいの場合、強気の場合、弱気の場合、何時ごろ打たれる可能性があるかおよそのイメージを得ることが出来る。それを私がモンテカルロ・シミュレーションした影像を次に掲げる。

到達予想レンジが時間の経過と共に、時間の平方根に比例して拡大していく理由がよく分かるし、これがストップの遠近感を計る基準なのである。

ランダム価格変動のレンジ拡大予想モデル
(画像:ランダム価格変動のレンジ拡大予想モデル)

損切り注文の入れ方

損切り注文すなわちストップロス・オーダーは、ストップ注文すなわち逆指値注文によって発注される。損切り注文は私の場合絶対にGTCで発注する。Good Till Cancellationの略称で、キャンセルするまで有効という指示付きの注文である。これは、万一事故や死亡、あるいは自然災害などで口座管理が出来なくなった場合や、コミュニケーションが途絶えたときの為の対策であり、ポジションに対して損切りの注文が入ったままなので安心できる。解除の手間は掛かるが、5年に一度くらいはこれで命拾いをする事があるかもしれない。

一方新規オーダーの場合はデイオーダーにしておく。同様な事情が発生したときに、入れなくても良い注文を入れっぱなしにしておくのを避けるためである。

さらに損切り注文は利食いの注文と抱き合わせにして発注することが多い。その際は上記の注文にOCOという条件を追加する。OCOはOne Cancel Otherの略称で、損切りか利食いかどちらかが執行されたら、直ちに他方をキャンセルせよという命令である。

成り行き損切りとメンタル損切り

損切りを成行き(マーケット・オーダー)で発注するのは、通常のトレーディングではズバリお薦めできない。メンタル損切り(メンタル・ストップ)という手法も同じだ。頭の中ではちゃんと逆指値損切りのレベルを設定して置くのであるが、実際には注文は入れず、市場が損切りレベルに達したら、成行きで損を切るという計画である。

これは計画でもなんでもなく、決断の先送りであり、幾ら実生活でそのノウハウを蓄積したとしてもマーケットでは何の役にも立たない。計画的に相場に失敗するだけだ。これは手のうちを知られたくない巨大ヘッジファンドが良く使う手法であり、機密保持の対策ではあっても健全な取引手法ではない。

以上で、損切りが出来るようになった。損はこの辺でお仕舞いにして、次章では待ちに待った利食いである。

第IV部:損切りとシステム取引 第1章:損切り 田中 雅 2009/12/24


第IV部:損切りとシステム取引

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