トレーディング、Arts&Logic by 田中 雅
第VI部:逆張り
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- 第4章:順張りから逆張りへ
第4章:順張りから逆張りへ
2010/5/20

(画像:松坂投手、クリエイティブ・コモンズ表示2.0一般ライセンスのもとに引用)
松坂大輔投手とジョン・ヘンリー、そして逆張り
2006年冬、日本中が60億円の契約金でボストンソックスに獲得された松坂大輔投手のニュースで沸いていた。
その頃のある日、私が見ていたテレビ番組は、松坂投手が確か球団オーナーが差し向けた自家用ジェット機から降り立って、ボストンでオーナーから歓迎の挨拶を受けている場面を映し出していた。
球団オーナーの名がジョン・ヘンリーだと聞いた私はビックリ仰天した。まさかあのジョン・ヘンリーではあるまい。過去数十年間に渡り常時世界トップ10にランクされている世界的先物トレーダーとして名を馳せた人物のことである。私の年代でシカゴ市場取引をした人なら必ず知っている人物である。よく見ると、細身でやや神経質そうな風貌とその鋭い眼差しはまさしくJ.ヘンリーのそれだった。
ヘンリーのロング・ポジション

(画像:J.ヘンリー、the terms of the GNU Free Documentation Licenseにより引用)
調べてみたらJ.ヘンリーは先物ファンドの運用と平行して球団の運用も手がけており、しかもこれは趣味と言うより本気のマネー・メーキング・ビジネスだった。その後、NHKスペシャルか何かで、彼は球団員獲得の基本的な価値判定プロセスをファンドのシステム・トレーダー達にやらせている事も知ることができた。
つまりシステム取引の商品選択の統計的格付けノウハウをそのまま選手獲得に適用し、松坂投手にまさに計算づくの長期ロング・ポジションを張っていたのだ。
2003年市場ボラティリティー急落の衝撃
しかしなぜそんなことをするのか、いま一つ判然としない。そこでジョン・W・ヘンリー&カンパニーの2006年版一般開示文書を入手して1986年から負け知らずの右上がり運用を続けていると言われてきた「通貨運用プログラム」の成績を調べてみた。すると衝撃的なことにこのファンドだけでなく、同じように歴史が長い彼の「全世界分散プログラム」も、2003年から以降の直近4年間はひたすらに負け続けている事を知ることができた(2007年の調査)。
2003年といえば全ての市場の基本ボラティリティーが急落した年である。その後市場ボラティリティーはリーマンショックまで回復することがなく、歴史上最低の水準でさらに低下傾向を強めて2006年に至ることになる。彼のファンドが不調である最大の原因がそこにあることは間違いなく、開示文書でも前半の半分を使ってその事を説明していた。
長期トレンド大航海時代の終焉?
長期トレンド取引の大航海時代が2000年以降(少なくとも一時的に)終焉してしまったことは、すでに第Ⅲ部順張り手法とシステム第3章順張り取引の行動計画の項でのべた。ではシステム運用者としてはどうすればよいのか?長期取引から短期取引に転向したと語ったリチャード・デニスと同じように、ジョン・ヘンリーも新たな新天地を求めて処女航海に乗り出したのだろうか?
その時である、私の頭の中にある素晴らしいアイデアが閃いた。デニスもヘンリーも非常にシンプルな長期トレンドフォローシステムを使用していたことが知られている。この二人の先駆者が順張りでここまで確実に負け続けているなら、この逆をやってみたら確実に勝てたはずである。この考えを徹底的に推し進めて調査していけば、新たに逆張りシステム構築の有効な突破口が開かれるのではないか?
順張りを逆張りに翻訳する
デニスが採用した順張りシステムはドンチャンのチャンネル・ブレークアウトである。このシステムはそのロジックのシンプルさが幸いして、その取引手順が完全に可逆的で、全ての順張り取引手順を逆張りに翻訳可能である。利食いや損切りストップを含めて逆張りにひっくり返すことが可能なのである。
これは調べてみる価値があるはずだ。デニスやヘンリーのようなトレンドフォローの巨匠でも負けるほどに市場が「順張り」に適さない環境に変化したのなら、その手法で「逆張り」をすれば勝てるはずである。長年無意識のうちに温めていた様々なアイデアが湧き出して、一気に結びついた。ヘンリーが松坂投手に60億円でロング・ポジションを張ったように、私は無料で世界最低の負け組みを探し出しショートを張ればよいのである。
チャンネル・プロファイル分析
チャンネル・プロファイル
直近X日間の日足高値または安値を抜いて行く方向に、順張りでポジションメイクする取引手法をチャンネル・ブレークアウトと呼ぶ。
当然X日間をどう定めるかという事が最大の関心事となる。そこで次のようなシミュレーション取引をしてその収益結果を図表に表し、これを私はチャンネル・プロファイルと命名した。単純リバーサル(どてん)順張りで、1日前の高値安値から始まり、過去99日間までの最高値、最安値を抜いた方向に取引するドテン取引の収益総額と最大ドローダウンを記録する。その図表を下に掲げた。
ほとんどの調査は1999年か2000年を調査起点とした。2000年はユーロが正式導入された年である。この調査では、わざと手数料やスリッページを一切含まない純粋のロジック取引で調査してある。この調査の真の目的は、順張りを逆張りにどうやってロジック変換するかと言う道筋を発見することであり、手数料とスリッページは別途計算しないと後に大きな間違いを犯す原因となる。
下記画像のPROFITはこの調査を実施した2007年7月時での累積損益。PVDRAQは期間中の最大ドローダウン。Y軸に示された損益は10万ドル単位を取引した結果である(インターバンク標準100万ドル単位の10分の1)1単位は100円である。
ドル円のチャンネル・プロファイル
下図ドル円チャンネル・プロファイルをご覧いただきたい。

(画像:ドル円チャンネル・プロファイル1999年~、1~99日。筆者作成)
X軸に示された最初の数字1は1日チャンネル・ブレークアウトを示す。リチャード・デニスに巨額の収益をもたらしたとも言われるタートル取引ルールはもはや通用せず、メインルールである55日ブレークアウトの前後は広範囲にわたって壊滅状況になっていることが分かる。タートル副次システムである20日ブレークアウトも有効ではない。これはドル円市場が進化したためであり退化したからではない。情報革命とネット取引の発達がこれに大きな役割を果たした事は容易に想像がつく。
禍(わざわい)を転じて福と為す
ここで、次のように考えてみる。順張りをした場合これほど広大な負の資源領域があるのだから、この領域で順張りではなく取引ロジックをひっくり返した逆張りにして取引したら、膨大な損失領域が収益に転じるのではないだろうか?これは恐ろしく魅力的な設問ではないか。この答えを探索するのがこの章の主題である。
プロファイルの読み解き方:ドル円を例に
1日ブレークアウトが収益マイナスとなっており、超短期の逆張りの可能性を示唆する。2~14日の間に2、7、12と収益3階層が存在する。短期的なブレークアウト順張りが不可能ではない様だ。しかしここだけが唯一の単純チャンネル順張り領域。15日以上のチャンネル順張りは壊滅。23日に巨額ドローダウンが発生しているので、これ以上のチャンネルをブレークしたら「利食い」をすべき事を示唆する。
広範に使われている20日と55日のタートル・ルールを安易に単純に適用すると最悪の結果になるかもしれない。ドル円はタートル潰しの舞台となっているようだ。
上図ドル円を見る限り、逆張りは中長期の領域でしか成立し難い。中長期の逆張りは非常に実行が難しく、可逆性の実験には向いていないのではないかと推察できる。特に中長期のポジションに対してどのように損切りをすればよいかのヒントがプロファイルからは全く得られない。
そこで、全通貨を調査して、もっと役立つチャンネル・プロファイルが得られる通貨を探索する。どの通貨が順張りに向いており、どの通貨が逆張りに向いており、どの通貨がどちらも難しくテクニカル取引には向いていないといえるのか、それが判定できれば大きな成果が上がったといえる。
ユーロ円のチャンネル・プロファイル

(画像:ユーロ円チャンネル・プロファイル、筆者作成)
順張りで収益を上げられるのは2~4日のチャンネルのみ。それ以外は70日までほぼ全てが損失領域、即ち「逆張り領域」となる。「ユーロ円の押し目は買い」と言う直感的認識が正しい事をこれほどうまく表現できる教材は他に無いのではないか?しかも逆張りは圧倒的に収益性が高い。
順張り安定損失の密集領域が13日前後と33日前後にあり、理想的な逆張り環境となっている。明らかに11日~16日安値まで押したときに押し目買いをする手法が有効らしいと分かる。大型のブレーク・ダウンが発生して31日~36日の安値まで押したときにも底入れ中期買いの機会だった。
しかしながら、その二つの領域で逆張りした場合の理想的な損切りチャンネル(=順張り)が見つからない。『ユーロ円には有効な損切りパラメータが無いか、見つけ難い』。これは重大なことだ。ユーロ円は押し目を買い、損切りしないという手法を採用するネット取り引き者が非常に多い。残念ながらその取り引きロジックは正しく、しかし、リスク管理の観点からは最悪のアプローチである。
詳しくプロファイルを見てみよう。20日ストップロスを13日(逆)エントリーに対する損切りに使い、44日を33日(逆)に対する損切りに使えそうだ。このストップロスは入れることによって収益が向上するのでは無く、入れても入れなくても長い目で見ると同じ結果である。しかしプロファイルを詳細に調べることで、リスク管理に使える損切りストップの候補がユーロ円でも発見され得ると言う事は注目に値する。
ユーロドルのチャンネル・プロファイル

(画像:ユーロドル・チャンネル・プロファイル、筆者作成)
正式導入2000年以降の調査。1~3日間のチャンネル領域で逆張りする。4日以上のチャンネル順張りが地味だが広範囲の収益領域。これはまさしく驚きの調査結果だった。但し単純なチャンネル・ブレーク順張り運用による成績はプラスになると言うだけでそれほど冴えたものではない。ユーロドルには穏やかなトレンドが発生しやすい。導入されて間もない若いマーケットであるのが主たる要因だろう。
1~3日チャンネル領域で逆張りして、それに対するストップロスを8日間のチャンネル領域で掛けていくという基本的逆張り戦術が浮上する。このアイデアを手がかりに別のさらに有効な逆張り取り引き手法に発展させて行くのである。
中長期トレンドの発生を23~24日間のブレークアウトで認識するという手法が有効。後に述べるドルスイスの26日ブレークアウトが有効なのと類似する。有効なトレンド認識のフィルターが作れることを示唆する。
ポンドドルのチャンネル・プロファイル

(画像:ポンドドル・チャンネル・プロファイル、筆者作成)
1998年~2007年の調査。何故かユーロドルとグラフが上下対照の損益正反対のプロファイルが特色で非常に興味深い。
注目すべき特異点がもう一つある。1日のブレークアウト取引だけが圧倒的に高い相対収益を誇る。これは何を意味するのだろうか?熟慮に値する。本論は90年代に連載された「取り引き手法アラカルト」の新規書下ろし版なのだが、当時私がその連載で発表した最良のシステムはドル円ではなくポンドドルを取り引きするものだった。
そのシステムには際立った特徴があり、それは超短期のブレークアウトで取り引きし、翌日の寄り付きで利益が乗っていれば直ちに確保して取り引きを終了すると言う日計りのようなシステムだった。その理由は15年くらい経過した今でも有効で、この図表をしっかりと読み解くことによって理解できる。ケーブルは即決の戦場である。
豪ドル米ドルのチャンネル・プロファイル

(画像:豪ドル米ドル・チャンネル・プロファイル、筆者作成)
短期的逆張りには向いていないように思われる。順張りも利食い無しでは地味な収益しか得られない。私にとっては非常に難しい市場であり、有効なシステムを作るのが非常に難しかった。タートルのルール20日と55日が、実は最悪の領域であることにも注目。タートル潰しが最良の手法である。
米ドルカナダドルのチャンネル・プロファイル

(画像:ドルカナダ・チャンネル・プロファイル、筆者作成)
逆張りに向いた短期領域と中長期トレンドが混在しているマーケット。近年中長期のポジションで地味だがトレンド収益の機会が増えた新興注目市場。地味な短期的逆張りの領域(=順張りの損失領域)が1~10日間のチャンネルで安定して階層的に存在する。損切りの候補が11日に単独で突出して存在するが、こういうスパイクは安定領域とは言えない。
トレンド認識は20日以上と55日以上のブレークアウト認識が理想的に適用できる。タートルの取引手法がそのまま適用できる珍しいマーケット。
全く動かないで短期逆張りが有効な期間と、強烈なトレンド発生時期が対照的に混在する。これはドルカナダだけではなくカナダ円のプロファイルでもある。取引モデル作成上も大変興味深いマーケット。
27日ブレークアウトが最良のトレンド認識の境界線となる点では26日のドルスイスと非常に似ている。
ドルスイスのチャンネル・プロファイル

(画像:ドルスイス2000年~2007年チャンネル・プロファイル、筆者作成)

(画像:ドルスイス1990年~2007年チャンネル・プロファイル、筆者作成)
おそらく主要7通貨ペアの中で最も理解しやすいプロファイルと言える。ドルスイスはドル円と同じくトレンド特性が近年もっとも衰退した市場である。上記二つの図表は上が2000年以降のデータを調査したもの、下が1990年代を含む歴史的調査の結果である。2000年以降逆張り環境に移行しつつあると見做すことが出来る。
- 1~4日までの逆張りチャンネルの存在(特に2000年以降)、
- それに対する5~7日ブレークアウト・ストップロス順張り領域の存在が損切りに適用できる、
- 再度13日~16日の逆張りチャンネルの存在(多層的に短期と中期で逆張りが出来る)、
- そして圧倒的収益ピークを形成する26日順張りのトレンド+ブレークアウトの認識用チャンネルの存在。
以上、逆張りに必要な全ての周期構造がうまく備わっている。主要7通貨ペアの中では、システム構築の教材として最も分かりやすく最適な市場と言えるだろう。ドルスイスの逆張りモデルから手がける事をここで決定する。
トレードシグナルとチャンネル・プロファイル
話題は変わるが、この様な調査をするシステム構築ソフトについて述べておきたい。以上の様な調査にはほとんどのシステム構築ソフトが対応している。なかでもトレードシグナルは図表による構築の映像的直感的な理解、操作の易しさ、ウォーク・フォワード・シミュレーション機能、ジェネティック・アルゴリズム探索機能が備わっているなどが他を凌駕しており最適のソフトである。
下図はユーロポンド日足の例である。チャンネル・プロファイルは下図左下の赤色棒グラフである。圧倒的に広大な負の領域が見て取れる。左上はその中でも最悪の1日チャンネルを順張りした結果の損失折れ線グラフ。理想的な損失曲線である。右上は、その損失アルゴリズムを逆転させ逆張りに翻訳しつつ別の手段で改良したもの。逆張りによる正の収益を獲得するまでのシステム構築プロセス全てを一画面に表示することが出来る。

(画像:トレードシグナル、システム構築画面上のチャンネル・プロファイル左下部折れ線グラフ図表、筆者作成)
ドルスイス逆張りモデル構築のプロセス
横ばい時の逆張り手法
ここで扱うモデルの逆張りエントリーには、「横ばい平常時逆張り」と「トレンド時逆張り」の二種類がある。トレンド時のエントリー手法は後述する。横ばい平常時の逆張りは次のルールで実施する:
チャンネル・プロファイル分析で判明したのは、1~4日間のチャンネルで逆張りをするという事だった。このルールを改良して類似のさらに柔軟なエントリー手法に変換する。直近X日間レンジの高値と安値方向にレンジを数十パーセント拡張したレンジにて、逆張りチャンネルをリバーサル(ドテン)リミット注文で連続的にひっくり返してエントリーする。盲目的コピーを避ける意味で、わざとパラメータは明示しない。
このモデルではエントリーをストップ順張りで実行することは無い。下図は逆張りモデルの逆張りエントリー・チャンネルを画像化したものである。青色の売りリミット線にタッチしたら売り、緑の買いリミット線にタッチしたら買うようにリミット注文(指値注文)する。日足なので一日一回の注文を寄り付き時に入れておけば、その後は市場観察をする必要はない。

(画像:逆張りエントリー・チャンネルのイメージ、筆者作成)
損切りのチャンネル
本取引システムではストップ注文(逆指値注文)は、損切りにのみ適用する。損切りはチャンネル・プロファイルの分析から5~7日のブレークアウトで実施すれば良いことが分かった。これを改良して、次のようなチャンネル・ブレークアウト方式で行う、すなわち、直近X日間レンジを今度は60~70%拡張したチャンネルで損切りを実施するようにストップ注文を入れる。
下図は逆張りエントリー・チャンネル(青色)の外側に、損切りストップロス・チャンネルを表示した画像である。逆張りエントリーと損切りストップが同じ手法で構築されており、非常に整合性が高く分かり易い。これが可能なのはチャンネル・プロファイルの分析結果が分かりやすいからだった。

(画像:逆張りエントリー・チャンネルに被せたストップロス・チャンネルのイメージ、筆者作成)
シミュレーション成績
下図は前述の逆張り(損失で評価、黒線)エントリーと、ストップロスによる収益の改善(赤線)を組み合わせた単純モデルの運用成績(紫線)である。これがドルスイス日足のチャンネル・プロファイルから得られた情報だけを頼りに、負の領域を逆張りし、正の領域を順張り(ストップロス)し、その両方を組み合わせて合理的な逆張りシステムを構築するプロセスである。
チャンネル・プロファイルから得られない情報と言えば、チャンネル・ブレークアウトを類似の改善された取り引き手法に置き換えている点だけである。この改良型は単純なチャンネル・ブレークの逆張りや順張りの数倍の成績を収める。しかしながら、チャンネル・プロファイルだけの情報を元に取り引きシステムを作る事も100パーセント可能なのだ。チャンネル・プロファイルが如何に示唆に富む有効な分析手法であるかお分かり頂けただろうか?

(画像:逆張りシステム取り引きシミュレーション結果、筆者作成)
トレンド発生時の逆張りエントリー手法(押し目エントリー)
トレンドが発生しているときに逆張りを実行すると当然のことながら大きな損失を被る。そこでトレンド発生時にはトレンド方向に逆らう逆張りを禁止し、さらにエントリーもトレンドに確実に乗れるような逆張りエントリー(=押し目)手法を考案する。
トレンドを有効に認識する手法自体があまり知られておらず、その上これをうまく実際取引の中に組み込むことは非常に難しい。ましてやチャンネルベースの逆張りをしているときには、それに取引ロジックが整合するトレンド認識手法を採用しないと、取り引きがギクシャクしてうまく行かない。
そこでドルスイス・チャンネル・プロファイルの多様な情報を利用し、中期チャンネル・ブレークアウト認識そのものをトレンド認識に転用してみる。こうすると取引全体のロジックが整合的になりうまくモデルを構築できる。
中期トレンド発生フィルター
このフィルターは前述の逆張りエントリーの手法を別のものに切り替える役割を担う。
フィルターには、チャンネル・プロファイルが示唆する26日間の単純チャンネルを使用する。
昨日の高値、乃至は安値が26日間フィルター・チャンネルを飛び出したら、トレンドもしくは中期ブレークアウトが発生したと認識する事にする。フィルターが有効化すると、押し目トレンド・エントリー手法を採用し、前項で述べた逆張りエントリー手法は使わない。毎日ブレークアウト条件を満たしたかどうかチェックしてどちらのエントリーを採用するか決定する。
下図は逆張りエントリー・チャンネル(青色と緑色)に、赤色の26日ブレークアウト・チャンネルを描画したものである。トレンドないしはブレークアウト発生をどのように認識するかイメージ化した。赤色のチャンネルからブレークアウトしたらトレンド発生を認識し、押し目エントリーに切り替える。

(画像:26日チャンネル・トレンド・フィルター、筆者作成)
中期トレンド発生時の押し目エントリー手法
トレンドすなわちブレークアウト発生の条件が満たされた場合は、現在値に極度に隣接させたリミット・エントリー・チャンネルから押し目エントリーをする。この押し目エントリーは私が考案した一例を挙げると次のように計算する。
- 過去20日間の日足レンジの平滑平均を求める。(これは過去10日間の単純平均に似ているので下図画像では代用)。これにドルスイスの場合は50%程度を掛ける。狭いほどエントリーが成功しやすいが1回当たりの収益は小さくなる。隣接の押し目領域から逆張り出来る手法であれば何でもかまわない。要点は確実にエントリーできると言うことに尽きる。
- 売りエントリーの場合(下図)、昨日引け値から 1. 値を加えて、それをリミット売りエントリーとする。
- 買いエントリーの場合は、昨日引け値から 1. を引いて、それを買いリミットエントリーとする。
- 1. の値の決め方であるが汎用性があり、ほとんどの主要通貨ペアで転用できる。有効な値は40~50%程度である。これは平均レンジの半押しを狙っていることになり経験則にも沿った考えだと思う。
下図はその押し目エントリーを画像化したもので緑色の内側の線が売りリミット線である。トレンド・フィルターは26日チャンネル(赤色点線)で示してある。ブレークアウト時にのみフィルターが有効になっている事が把握できる。内側の緑線で売りリミットエントリーした後は、外側の緑線で買い利食い手仕舞いリミットする。何よりも重要なのはブレーク(トレンド)に逆らう逆張りは禁止する事である。すなわち常時とは異なり、フィルター有効時には外側の緑線に対して逆張りエントリー注文は発注禁止となる。

(画像:26日ブレークアウト発生時の押し目エントリー、筆者作成)
押し目のエントリー手法には様々なバリエーションが考えられるが、私の場合非常に優れていると思える手法はこの段階では発見できなかった。後に、ジェネティック・アルゴリズムの助けを借りてそれを探し出すことになる。
以上をまとめると、私が考案したチャンネル・プロファイルというコンセプトを利用して順張りや逆張りシステムを構築する要点は次のようになろう。
次の条件を兼ね備えるプロファイルを示す通貨は理想的な逆張りの通貨となる。そのようなプロファイルを示さない通貨は、順張り逆張り混合の取り引きが難しく現時点では避けたほうが良い。
- 短期的な突出した損失の領域が短期領域で判別できる。(=逆張りのエントリーに使う)
- それよりも少し長めの時間枠で突出した収益の領域が判別できる。(=損切りに使う)
この二つが一番重要であるが、さらに次のような特徴があれば役に立つ。
- 中期的な突出した順張りブレークアウト収益の領域が判別できる。(=トレンド発生を認識してトレンド方向への逆張りを中止するフィルターが作れることを示唆する)
- 損失の理想領域を探すにはドローダウンも重視した方がよい。
第VI部:逆張り 第4章:順張りから逆張りへ、 田中 雅 2010年5月20日



