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トレーディング、Arts&Logic by 田中 雅

第VII部:システム構築と評価

第3章:時間足ヒストリカル・シミュレーション(1:チャンネル・プロファイル)

2010/8/20

取引時間枠の決定と時間足取引市場の選択

シミュレーションを実施するうえで最も重要な事は、正確で厳密なシミュレーションを行うことである。正確なシミュレーションが威力を発するのは、取引戦略ロジックが正しいかどうかの検証である。
ところが取引ロジックとはあまり関係ない諸問題が現実には発生し、それらの多くは正確なシミュレーションが元々不可能であるような場合が多く、その戦略が有効なのかどうか不明なまま、最後まで上手く解明できない事が頻繁に起きる。

その代表的な難問が、(1)シミュレーション市場価格データにまつわる精度等の問題、(2)スリッページの問題、(3)両打ちの問題、であると前章で述べ、まず為替「日足データ」に関する問題点を様々な角度から徹底的に検証した。

今回は時間足(=分足を含む)データを使った取引戦略のシミュレーションの実際例を公開しつつ、現実的に我々が取りうる最良のシミュレーション手順を模索していきたい。まず取り掛かるのは時間足の取得とその精度の検証である。長年の試行錯誤の経験から、次のような手順で進めていくのが最も有益だと考えるようになった。

  1. 出所が異なるデータを何種類か用意して、全てをシミュレーションで使ってみる。異なるデータで別々にシミュレーションしても、全てで満足の行く成果が挙げられるような戦略が良い。これはデータの精度に過度に依存するような戦略を避けるための工夫である。正確なシミュレーションとは「正確この上なく細かくやること」ではない。実はこの世のあり方の本質とも言える「多様な不正確さ、不条理さ」を上手く受容し、消化し、回避していくような筋道をシミュレーションすることである。いわば未来予測につき物の「不正確さの本質を」「できるだけ正確に」シミュレーションするのである。

  2. 時間足には多過ぎるほどの選択肢がある。少なく見積もっても半日足(12時間足)、8時間足、6時間足、4時間足、1時間足、30分、10分、1分、ティックデータなどがあり、この中からまずどの時間足を使ってシミュレーションに取り掛かるかを決定する。(1)で述べた原理が示唆するように、究極の精密データであるティック足でシミュレーションするのは実は良くないだろうと推測がつく。最大の決定要因は注文に割くことの出来る現実的な手間と暇だろう。日足取引では1日1回取引注文を更新発注するが、時間足システムトレーディングでは1本のバー当たり1回の注文発注が発生しうる。つまり1時間足であれば1日24回の注文発注に備えて待機出来る暇が必要となる。

  3. 東京時間だけを数時間毎に取引するようなシステムは好都合と言えるが、実際に戦略をプログラミングするには時間配分処理の特殊なプログラミング知識を必要とする。そうなると6時間足で早朝、昼、夕刻、深夜という風に6時間毎に4回の注文発注をこなすか、あるいは8時間足で東京市場寄り付き、夕刻(海外市場寄り付き)、深夜と3回の発注をこなすかの選択肢となる。これらの方式であれば最低のプログラミング知識でスクリプトが書けるだろう。

  4. しかしながら時間足(分足を含む)取引に期待される高収益の優位性を最大限に生かすには、1時間程度の間隔で24時間連続発注すれば最も有効な成果が挙げられそうだと想像できるし、その場合は自動発注自動執行の導入に取り組む決心をする以外にはない。1時間程度の取引サイクルであれば、自動執行に不具合が生じた際に(深夜就寝時間中と言う事もあり得る)、手動取引による不具合からの回復にかろうじて対処できるだろう。現実の市場でも、自動執行がいよいよ実現化のスタートを切っており、これが恐らく最良の最も興味ある選択肢だろう。そこで1時間足の取引戦略シミュレーションに取り掛かるとここで決定する。本当に自動執行の実施に取り掛かるかどうかは、シミュレーションの結果次第で最終決定すれば良いだろう。

1時間足データの取得作成とその検証

まず1時間足を使って為替市場から収益を上げる事が出来そうかどうか予備的な検証をしてみる必要がある。そこで良い見通しが立てば、その先の本格調査に取り掛かる。本格調査には手間隙がかかるので、本格調査に踏み出す前に、努力する価値があるかどうかをまず事前に調べておきたい。本章ではその事前調査について詳説する。

取得データの通貨を決定

まず次の為替市場から1時間足データを取得する。最低でも、ドル円、ユーロ円、ユーロドル、ポンドドルが必要である。時間足取引最大のネックの一つは取引コスト(手数料とスリッページ)の影響が非常に大きい事であるが、上記4通貨ペアは取引コストが最も小さいと一般に考えられている。

今回の執筆には次の7通貨ペアを取得した。豪ドル米ドル、ユーロ円、ユーロドル、ポンドドル、ドルカナダ、ドルスイス、ドル円。実は他の全てのクロスも用意したのだが、クロスは一部を除いて比較的取引が難しく、本執筆のシミュレーションが膨大複雑になるだけなので、現段階では使用を見送る。

3大通貨に加えてポンドを優先的に加えたのは、ポンドドルを含むポンドクロス通貨の順張り取引の成績が良い事が経験的にわかっているからである。その他の通貨を3つ加えた理由は、時間足の正確さをチェックする為の正確な価格情報が最も容易に手に入る通貨だからである。

また通常はユーロポンドとユーロスイスもこれに加えておく。この二つは逆張りに向いた戦略が立てやすく、逆張り戦略と順張り戦略とを比較検討するのに役立つ。またクロスの中では正確な情報の取得が比較的易しい。

しかしながら今回はこれら2クロス通貨を外す。今年のユーロ危機の最中にこの2つの価格変動特性が激変してしまったからである。下図は2000年導入以来のユーロスイス週足。今年に入ってからのユーロ通貨危機によりボラティリティの過激な急騰に見舞われた。2008年から2009年に掛けてもリーマンショックに拠るボラティリティの高騰があったが、これは全ての通貨を襲ったのに対し、今年のユーロ危機では前後の変化の相対的激しさと言う点ではユーロスイスほどの市況急変に直撃された通貨はほかに無い。

このようにボラティリティが不意に急変した場合、システム取引の収益は予想が付かなくなる。非常にうまく行くかもしれないが、全く上手く行かないかもしれない。損益の何れもが想定以上に巨額となりやすく、事前の見通しが付かない限りは外しておいた方が安全である。下図のように執筆時のユーロスイスは直近で最大のレンジ・ボラティリティを更新中である。

ユーロスイス、レンジ・ボラティリティ計測チャート
(画像:ユーロスイス、レンジ・ボラティリティ計測チャート:筆者作成)

取得データの精度を検証

取得データが正確かどうかは私の場合次の様に検証する。

  1. 時間足取得データを変換して日足に転換する。

  2. 転換した日足の高値と安値と引値を、精度が高いとされているいわゆる標準日足データと比較する。

  3. 通常は10ピップ程度までの誤差で頻繁にずれているのが判明する。しかも非常に多くの場合はランダムにずれているのではなく、ある程度規則的にずれていることが多い。しばしば標準日足に比較して常に低い値である事が多い。これは時間足作成の基になるティックデータがビッドの記録で構成されている為である。市場価格は実はビッドとオファーに拠って両建てで構成され、ビッドは常にオファーよりも低い。この場合は合格とする。

  4. 極度にずれていたり不規則にずれている場合は、不合格として破棄するか、このデータの精度を怪しみながらも破棄しないでシミュレーションを開始する。後者の選択をするのは最終的に使用するデータが他にもう一種類以上事前に用意されている場合で、例えばトレードシグナルを使用する場合には、トレードシグナルの時間足を使って後で比較検討のシミュレーションを実施できる。その比較対象として興味本位であえて不具合を怪しむデータも使ってみるのである。どんなデータでもこなせるような戦略は柔軟性があり安定した戦略であると見做せる。

データの精度が何故悪くなるのか、原因はさまざまで、我々の推測の及ぶところではなく、不明な事が多い。しかしとりあえず余程の致命的な不具合が判明していない限り不具合データにて先に進む。では「致命的不具合」とはどのように判定できるのだろうか?

不具合のあるデータの簡単な判定方法

出来上がったデータは拡張子がtxtやprnである場合にはテキストエディターで読み取り、csvである場合にはエクセルで読み取るのが普通だが、実はテキストファイルなのでエディターでも開く事が出来る。

まず最初にチェックすべき事は日柄と時間表示のチェックである。良くあるのが週末のはずなのにデータがNY市場金曜日の17時以降も(しばしば24時まで)記録されている場合。あるいは日曜日のNY時間17時以前にも(しばしば0時から)データが記録されている場合である。これらは明らかに週末に関わる17時前後の処理を誤った為に発生する。金曜日NY17時から日曜日NY17時の間は休場しているように表示されるべきである。NY時間の冬時間と夏時間の交替もさまざまなデータ処理上の技術的問題を引き起こす。

次に週末でもないのに、データの記録が欠損してしまい、それを人工的に勝手な値で補充する結果起きる不具合がある。これらの多くはOHLCが全て等価である数値を欠損欄に勝手に埋め込んである。

大量に欠損欄を埋め込んである場合には、数値をスクロールさせながら観察すると発見できる。同じ数値が沢山並んでいる場合にはスクロール画面の同じ数値があたかも静止しているように見えるので判別できる。このスクロール擬似静止現象は同じ値の数値が連続している為に発生する。

1分足などでは閑散市場では価格変動が停止してしまう為に、本当にその様な静止市況が発生している場合もあり得る。しかし、時間足でこれが大量に発生している場合は、作成過程に起きるエラーが原因である。

前章でも述べたがこの様なゼロレンジを書き込む不具合データは、深刻なシミュレーションエラーの原因となりうる。

この不具合を発見し取り除く為のツールをエクセルで作成した。ゼロレンジを検索するのも一つの手である。次に掲げる例では、寄り付き、高値、安値、引値をチャートに描画して目に見える不具合があるかどうかを調べる。さらにこの作業を容易にするために専用のチェック指数を作って併記した。次のエクセル・チャートをご覧頂きたい。

ドル円時間足折れ線チャートとそのスーパー・パウル指数
(画像:ドル円時間足折れ線チャートとそのスーパー・パウル指数:筆者作成)

これはドル円1時間足8千本のチャートである。左側X軸がドル円価格であり、この価格水準から執筆時のドル円であることが判明する。一年間は祝祭日無しの市場営業時間換算で6275時間あるので、8千時間は約1年と3ヶ月に相当する。実は2000年頃から時間足は保管してあるのだが、なぜ直近1年余りしか使わないかと言うと、これ以上のデータをチャート上に描画しても、裸視によるチェックでは不具合発見が難しい事が一つ、もう一つ重要な理由があり次章にて紹介するウオーク・バックワード・テストという特殊な検証法に関係しておりその際に再度触れることにする。

目測による不具合のチェックは下記の手順で実施する。

  1. 目測で時間足折れ線グラフに異常が無いかチェックする。

  2. 引け値は黒の折れ線グラフだが、安値は黄色なので黄色の線は黒線の下に適宜はみ出た恰好になる。赤色は高値なので、黒線の上に適宜はみ出た形とならないと不具合データである。

  3. 次にチェックの為の指数を作った。これは1時間足の引け値から引け値までの変動幅の絶対値(マイナスを取り外してプラスにしたもの)を累積したものである。右側X軸の単位は円であり、この累積額を表示する。つまりドル円は直近8千時間でジグザグ爬行(はこう)により800円走った。8千時間で8万ティック走っているので1時間当たり10ティックである。この数値が後に役に立つので記憶しておく。

  4. これは毎時間毎に次の引け値が上るか下がるかを完璧に予測して取りうる最大収益を表しており、俗に「神の取引指数」と呼ばれている。この際、私のボキャブラリには馴染まないので「スーパー・パウル指数」と名付けた。パウルとは最近ワールドカップサッカーの勝敗を全て完全予測した、あの私が崇拝するドイツの蛸の名前である。

  5. この指数は滑らかに右上がりで無ければならない。私がここまで指摘したような不具合が大量にある場合は、指数は随所で水平に横ばいとなり直ぐに不具合判定が出来る。エクセルはチャートの不具合箇所にマウスを近づけるとセル番号を教えてくれるので、その場所はデータベース上で直ぐに検証でき修理する事ができる。

パウル、ウィキメディア・コモンズよりGNU Free Documentation Licenseにより引用
(画像:パウル、ウィキメディア・コモンズよりGNU Free Documentation Licenseにより引用、撮影者:Tilla)

以上の手順で精度の検証を終えた1時間足1セットが揃った。ここまで詳しくデータの精度に関して事前調査をしてシミュレーションに取り掛かれば、後々データにまつわるトラブルに陥る可能性が小さくなる。ではここで次の段階に進む。

チャンネル・プロファイルによる収益性基本分析

データが揃うと、次はシミュレーションに取り掛かるわけだが、多くの場合どのような戦略をどの市場に適用すれば良いのかそれさえも全く分かっていない事が多い。参考書を読んでみると個々の戦略のシミュレーションに関する具体的記述は多いが、ではどの様な有効な手段でその戦略そのものを発見すれば良いかと言う道筋に関してはほとんど何も書かれていない。

この様な手ぶらの状況で役に立つのが、私の考案したチャンネル・プロファイルによる市場事前調査である。ここでは時間足を使って為替市場を取引するのだが、その場合、いったいどのような戦略を採用してどの通貨に立ち向かえば最も効果的に収益があげられそうなのか、その見通しを立てるまでの筋道をこれから提案してみたい。

1時間足チャンネル・プロファイル

直近X時間の時間足高値または安値を抜いて行く方向に、順張りでポジションメイクする取引手法を、時間足チャンネル・ブレークアウトと称する。日足のチャンネル・ブレークアウト戦略に関しては「第III部:順張り手法とシステム 第3章:順張り取引の行動計画」に詳しく述べてある。

この戦略は実用に耐える取引手法であるだけでなく、分析技術としても非常に優れているので市場収益特性の基本調査をすることに応用する。これをチャンネル・プロファイル分析と名付け「第Ⅵ部:逆張り 第4章:順張りから逆張りへ」に詳しくその手法を紹介した。チャンネル・ブレークアウトとプロファイルの事前知識が無い読者は、まず以上の二つの章を予め読んでおかれると、ここから先が分かり易くなるだろう。

チャンネル・プロファイル分析の優れた特性を知るために、早速次のドル円時間足チャンネル・プロファイルを見てみよう。

ドル円1時間足チャンネル・プロファイル、14ヵ月取引結果
(画像:ドル円1時間足チャンネル・プロファイル、14ヵ月取引結果:筆者作成)

上図のPROFITと称する折れ線グラフがこの調査を実施した期間での最終累積損益。PVDRAWは期間中の最大ドローダウン。Y軸に示された損益はティックを表示単位とする。為替市場ではピップとも呼ばれる。ドル円であれば1ドル当たり1銭。ユーロドルであれば1ユーロドル当たり0.0001米ドルセントである。シミュレーションは直近の14ヶ月間を対象とした。1年と2ヶ月間である。

よくあるような取引開始から終了までの全期間の資産増減の歴史ではない。X軸の1~50までの数値は時間の経過ではなく、高安チャンネルの時間幅を指す。単純リバーサル(どてん)順張りにて、1時間の高値安値から始まり、直近50時間までの最高値、最安値を抜いた方向にドテン取引(リバーサル取引)する。その14ヶ月最終損益額と期間中最大ドローダウンをY軸に記録してある。

表を見れば直ぐに分かるように、ドル円では1時間から4時間までのチャンネル取引が損失。5時間から24時間までのチャンネルが14ヶ月で最大2000銭の手数料無しの理論収益。収益領域は非常に安定している事が判明する。つまり逆張りをするなら4時間チャンネルまでの領域に限られ、その安住の領域は、やや狭苦しい印象を受ける。4時間より長い時間のチャンネルでは順張りで立ち向かう。順張りはパラメータ領域が広い範囲で安定しており、単純な様々な取引戦略を応用しても成功のチャンスがかなり高そうだと推察がつく。ここまででも、既にドル円時間足取引戦略の糸口はつかめたと言えよう

日足チャンネル・プロファイルとの比較検証

次にドル円日足との比較分析をしてみよう。既に第VI部第4章で直近10年間のプロファイルを掲載してあるので本章では直近5年間のプロファイルを掲げる。この方が時間足との整合性は高くなる。日足と時間足を比較しやすいように、Y軸は時間足プロファイルと同じ単位(ティック表示)に設定してある。

ドル円日足チャンネル・プロファイル、直近5年間取引結果
(画像:ドル円日足チャンネル・プロファイル、直近5年間取引結果:筆者作成)

順張りの安定成功領域は僅か6日から11日程度。広い領域とはいえない。逆張りは超短期でいくが、3~4日間の尖った領域を見ても、安定収益の戦略を日足で発見するのは難しそうだとも考えられる。明らかに、ドル円日足を使う限り順張りでも逆張りでも、安心して取引できる戦略を発見するのがかなり難しそうだと言う事が分かる。これがプロファイル比較分析のメリットである。たった二つの図表から多くのことが判明し、無駄な期待や、無意味な努力を回避するのに非常に役立ちそうだという事がお分かり頂けるだろう。

損失領域を発見することにも大きな興味を抱くプロファイル分析では、わざと手数料やスリッページを一切含まないで損益を計算する。こうする事により、通貨を取引して発生する損失がコストによるものか、それともロジックが上手く機能しないことに起因するのかを分離して理解しようと試みる。

その為に手数料とスリッページを当初計算しない。その上で安定損失領域が発見できれば、それはコスト負けではなくロジック負けしているので、その逆ロジックを戦略とすれば逆張り取引で成功を収める可能性が高まるというわけだ。

もう一つ重要な秘訣があり、私は特殊なブレークアウト設定をする。ブレークアウト取引の概念を少し変形させてある。通常はチャンネル高値や安値を1ティック以上抜けた価格に配置したストップ注文によりポジションメイクするのだが、この調査では、チャンネル高値や安値と等価になった時にストップ注文でポジションメイクするように抜け幅をゼロと設定した。

ただでさえ騙しの多いチャンネル・ブレークアウト取引なので、抜けていないのにも関わらず抜けたのと同じポジションを取る事になり、この方式では収益が正規の設定に比べて目に見えて悪くなる。では何故このような設定に変えてあるかと言うと、騙される状況を積極的に取り入れて不利なシミュレーションをする事により、現実の為替市場取引をより正確に模倣できるからである。

よく言われるように、ストップを入れてあるチャンネル高値にギリギリで到達していないはずなのにロングポジションが成立してしまった、というような不都合が為替市場では頻繁に発生する。このような不合理性をシミュレーションに組み込んで備えておく事が秘訣である。

ユーロドルの1時間足チャンネル・プロファイル

次にユーロドルの時間足プロファイルを掲げる。

ユーロドル1時間足チャンネル・プロファイル、1年2ヶ月
(画像:ユーロドル1時間足チャンネル・プロファイル、1年2ヶ月:筆者作成)

ユーロドルはプロファイル分析によると陰影の深い複雑な顔つきをしている。陰陽の両特性を兼ね備えており、順張りと逆張りの両方を組み合わせた複雑な戦略を構築しやすい。 また、ある戦略の適正利食い水準(逆張りの概念に属する)や、適正損切り水準(順張りの概念に属する)を比較的容易に定めやすい。

スーパー・パウル指数で計測したユーロドルの走行距離は8千時間で11万ティック足らずである。ドル円ではこれが8万ティックだった。ユーロドルは沢山走る割には絶対収益が小さい事が分かる。 大人しいマーケットであり収益も損失もその絶対値はドル円に比べて小さい。このような場合は収益をリスクで割った指数で戦略の良否を判断する事になるが、それに関しては後述する。

2時間ブレークの領域に際立ったスパイク状(=尖った形)のブレークアウト収益の可能性があり興味を引く。3~4時間ブレークが逆に損失となっており、2時間ブレークの近辺で順張り戦略を取り、直ちに利食いに持ち込む戦略を検討する価値があるかもしれない。いずれにしてもブレークアウトで取った順張りのポジションは、24時間高安チャンネル以上のブレーク領域に持ち込んだらそこから先は利食いの領域であることがわかる。

この様な自由な空想によって戦略のアイデアを創造していく。それを後に別途一つ一つ検証すればよい。チャンネル・プロファイルは発想を刺激するツールなのだ。

ユーロドルの日足チャンネル・プロファイル

ユーロドル日足チャンネル・プロファイル直近5年間
(画像:ユーロドル日足チャンネル・プロファイル直近5年間:筆者作成)

上図ユーロドル日足プロファイルは、第Ⅵ部第4章で掲げた10年間取引の図表とは異なり、直近5年間を調査したものであるが、10年間の取引結果と余り変わりない。驚くべき事に、時間足の特性と日足の特性が実に良く似ている。マクロからミクロまでの自己相似性が高く、ある意味で秩序だった価格変動構造を持っている模様である。筆者の目にはシステム取引に向いている通貨だと映る。

ユーロ円1時間足チャンネル・プロファイル

ユーロ円1時間足チャンネル・プロファイル
(画像:ユーロ円1時間足チャンネル・プロファイル、筆者作成)

ユーロ円の時間足プロファイルが示唆する戦略は単純そのものである。1~10時間までの順張りブレークアウトが上手く行きそうだ。期待収益の絶対値はドル円の2倍、ユーロドルの3倍にはなりそうである。負の領域の観察によると、ポジションが36時間以上のチャンネルブレークの状況になれば、ドテンをするのを待たずに利食いをすると良いかもしれない。

ユーロ円の日足チャンネル・プロファイル

ユーロ円日足チャンネル・プロファイル直近5年間
(画像:ユーロ円日足チャンネル・プロファイル直近5年間:筆者作成)

ユーロ円日足は極端に順張りが難しい世界である。直近5年間の取引期間には近年のリーマンショックと今年のユーロショック大暴落が含まれており、これらの暴落期には順張りが可能なようにも見えるが、システム取引として実行し、成功するのは非常に難しいだろう。

では逆張りがやさしいかと言うと、大暴落時に持ち堪えられるのであれば成功するかもしれないが、そもそも持ち堪えられないから大暴落するのであり、これはシステム取引で扱う問題では無く、心理学もしくは精神医学の領域で扱うべき領域だろう。私には日足では順張りも逆張りもシステム構築が難しすぎるように見える。詳しい分析は第VI部第4章を参照していただきたい。

ポンドドルの1時間足チャンネル・プロファイル

ポンドドル1時間足チャンネル・プロファイル
(画像:ポンドドル1時間足チャンネル・プロファイル: 筆者作成)

圧倒的な順張りの高収益領域が13時間近辺を前後に9時間ほどの裾野で広がっている。様々な順張り戦略が応用できそうだし、比較的成功しそうだと思われる。この13時間近辺のブレーアウト領域が、下図日足ブレークアウトの1日ブレークのやはり圧倒的な成功を導いているのだと推測できる。

ポンドドルのスーパー・パウル指数は8千時間で14万ティックである。これはドル円の8万ティック、ユーロドルの11万ティックに比較すると非常に大きいが、その大部分は価格水準そのものが高い事に由来しており、走行距離が長いというだけで、システム取引向きの価格特性が良いという訳ではない。単に大きな人は小さな人よりも歩幅が大きいという事だ。しかしそれにしてもこの時間足のプロファイルには興味をそそられる。ちなみにポンド円も似たようなタチの良い順張り特性を備えている。

ポンドドルが超短期的な取引に向いている事は、次に掲げる5年間取引した日足プロファイルでも明らかだ。日足の傑出した1日ブレークアウト収益に注目してみよう。日足5年当たり8千ティック期待収益は、時間足の14ヵ月当たり4千ティックの期待収益と並んで検証する価値が十分にある。

ポンドドル日足チャンネル・プロファイル
(画像:ポンドドル日足チャンネル・プロファイル: 筆者作成)

以上の様にして順次調べ上げていくわけだが、事前調査はこの辺で十分だろう。時間足のシステム取引にはそれなりの手間と暇が日足よりも掛かるが、その努力分だけの高収益をもたらすだろうと期待できそうだ。それも比較的構築の易しい順張り戦略で。

ではここで準備した全通貨の時間足チャンネル・プロファイルを総合的に比較検討して、これ等の市場で何をすべきかの予備的結論をまとめる事にする。

チャンネル・プロファイル総合比較分析

下図は今まで見てきた主要通貨の1時間足チャンネル・プロファイルを一つの図表に横並びにまとめたものである。通貨毎の大まかな収益特性の比較はこれで一目瞭然である。取り分け興味を引くのはドル円の非常に安定した順張り収益領域の存在、ポンドとユーロ円の傑出した順張り領域の存在、及びそれに付随する利食い領域の存在。さらにドルスイスのやはり安定した逆張り領域の存在などである。


7通貨時間足チャンネル・プロファイル総合比較分析
(画像:7通貨時間足チャンネル・プロファイル総合比較分析: 筆者作成)

ただし絶対ティック収益が高いから良い取引通貨なのだとは限らない。この図表は収益をティックで表示しているので、通貨毎にティック通貨が異なる。ドル円とユーロ円は銭表示だが、ユーロドル、豪ドル、ポンドドルでは100分の1米ドルセントであり共通の物差しではないのだ。

そこで戦略評価の尺度として最も使用されている収益/リスク率でこの表をランキングで並べ替えて再評価してみよう。今回は図表変換したものではなくオリジナルのエクセル数値表を提示する。収益/リスク率はR/Rの省略記号で表示してある。

こうすると今まで気がつかなかった新たな優良収益の可能性が、別の角度から見えて来る。次の表では今まで殆ど注目しなかった米ドルカナダドルが優良通貨として浮上しているのが分かる。またユーロ円の2時間ブレークアウト(表の3行目)は平均3ティックの収益しかなく、コスト倒れのリスクが高い事も分かる。おまけに両打ち発生率が11%と、シミュレーション上やっかいな技術的問題が待ち受けていることも予感できる。

7通貨1時間足チャンネル・プロファイル総合比較分析、収益リスク率ランキングの上位14
(表:7通貨1時間足チャンネル・プロファイル総合比較分析、収益リスク率ランキングの上位14: 筆者作成)

これ以外にも様々な分析情報がここから得られ、結論としては、ここまで着目してきた要点に沿って時間足のシステム構築に時間と努力を投入する事には大きな意義がありそうだと確信することになるだろう。

次章ではここまで得られた情報を基に、如何にしてチャンネル・ブレークアウト以外の最適戦略を、効率的に且つ合理的に発見していくのか、如何に適正化シミュレーションを実行していくのか、その筋道を探っていく。

第VII部:システム構築と評価 第3章:ヒストリカル・シミュレーション(1:チャンネル・プロファイル)、 田中 雅 2010年11月xx日