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トレーディング、Arts&Logic by 田中 雅

第VII部:システム構築と評価

第3章:時間足ヒストリカル・シミュレーション(2:全幅探索と両打ち)

2010/9/15

全通貨全戦略の時間足「全幅探索」

では時間足全幅探索に取り掛かる。ここで言う全幅探索とは、勝てそうだと既に目を付けている戦略のパラメータを探索する事ではなく、ユニバーサル探索を指す。すなわち手持ち全通貨、全ての戦略の各々全てのパラメータを探索する事を意味する。虱潰し(しらみつぶし)に調査して実用に耐えうる優秀なコンビネーションを発見しようと試みる。

これは通貨市場ユニバースの正面入り口を探す事とも言えるだろう。実際出口から間違って入ってしまい、即退散と言う人も沢山いるわけだから、このやり方は正攻法と言えるかもしれない。

本執筆の基本理念は答えを提示する事ではなく、答えを見つけるための道筋を考え抜く事にあるが、今回もそれに従う。

「全通貨」と言っても文字通りの市場全通貨ではなく、第一段階では次の7主要通貨に限定した。ドル円、ユーロ円、ユーロドル、豪ドル米ドル、ポンド米ドル、米ドルカナダ、ドルスイス。

「全ての戦略」とは具体的に言うと、私の場合にはボラティリティ・ブレークアウトの既知の手法全てを指す。つまりブレークアウト取引手法に属する67種類の戦略に限られる。これら全てにはある共通点が存在する。つまり市場が歩行するその幅をどの様に計測すれば良いのか、その物差しを見つけること、及びその物差しを市場の何処に当てて計測すればストップ注文に使う抜け幅を適切に計算できるのか、これらに特化した戦略に限られているということである。

言わば有効な最短売買ストップ(=逆指値注文)とは何かという答えを探すように特化しているのである。

普通、取引戦略と言うとRSI指数がどうなったら買うとか売るとかを指す事が多いのだが、私は市場と真剣に向き合って30年にもなるが実はまだそこまで行っていない。犬も歩けば棒に当たる、という諺がある。恐らくこれが私の取引戦略の基本的な姿ではないかと思う。

千鳥足戦略

犬も歩けば棒に当たるとは、もともとは下手に出て行くと災難にぶつかるという意味だったらしい。最近は、進んで何かを始めて歩き出すと何がしかの幸運に遭遇する事がある、という意味でも使われるようになった。これはまさしく我々市場取引に取り組んでいる人々の運命をうまく表現した格言だといえる。

では本当のところ、犬はどの様に歩けばもっとも早く災難ではなく幸福に遭遇できるのか?その歩幅と歩行速度と足の角度などを定量化し、数値モデル化し、成功パターンを識別できるのかどうか、そんな馬鹿馬鹿しいほど単純な事を、未だに調べているわけである。

市場における犬の歩行とか酔っ払いの千鳥足の研究などでは、それなりに相当詳しくなってしまったというわけだ。67もの戦略を思いついたのはそのせいだ。

もちろん、戦略は別に千鳥足戦略である必要は無く、自分の好みに合わせて候補戦略を選べばよい。シミュレーションソフトには通常100程度(トレードシグナルでは数百)の戦略が無料で付いてくるのが普通なので、これ等すべてを丹念に順次調べ上げていけば良い。

無差別に全てを調べ上げるのが本来の全幅探索の意義である。ユニバーサル探索とはよく言ったもので、まさに市場宇宙旅行に出るようなものだ。

スリッページと損失領域

全幅探索はスリッページ無しで始める。次章ではスリッページを導入する。調べる領域は順張りの損益両方の領域全てである。儲かる領域だけを探すのではない。損失領域は後に逆張り戦略の発見の時に役立つことになる。これは重要な秘訣である。

データファイル

データファイルはそれぞれの通貨に対して1時間足8000本を用意した。その内、直近6735本をシミュレーション期間として使用した。実際には市場休場などもあり、昨年2009年6月中旬から今年2010年8月中旬をカバーするデータである。つまり、今年(2010年)発生したユーロショック危機期間は学習期間として含まれているが、2008年に発生したリーマンショック危機は含まれていない。

ここで発見される戦略はリーマンショックを知らないので、後に戦略の有効性をチェックする際に、発見された戦略がどの様に未知のリーマンショックを乗り越えるのか、それとも乗り越えられないのか、そんな事を早く知りたくてワクワクする。その検証目的のために、過去10年余りの約7万本の時間足も別途用意した。

ワークスペース

本執筆の全幅探索旅程表は次の様になる。ひまわり証券が提供するトレードシグナルのワークスペースをファイル化して羅列した様なもので、何をどの様な順序でシミュレーションするか把握できる。このファイル群全体がシミュレーション・戦略ポートフォリオを形成する。


(画像:シミュレーション・戦略ワークスペース・ポートフォリオ:筆者作成)

これはドル円の例だけを取ったものだが、IYがドル円を現す。3文字目がボラティリティの計測手段を分類しており、4文字目が抜け幅の起点を特定する符丁である。抜け幅の起点だけでも驚くほど多種多様なアイデアがある事がお分かりになるだろう。最後のNはドテン取引を現しており、損切りも利食いもせず、フィルタも使わず常時市場でポジションをひっくり返しながら取り続ける順張りトレンドフォローである事を指定する。

詳しくは第Ⅳ部第3章:テクニヘッジ・ブレークアウトをお読みいただきたい。

この命令セットを全通貨で実行する。最初に計算する戦略はIYACNという戦略だが、Aと言うボラティリティ計測手段と、抜け幅の起点Cがあらかじめ指定されている。これをシミュレーションソフトに読み取らせて、ボラティリティの計測から抜け幅の計算に至るまでに必要な全ての数値パラメータ、すなわち時間枠とレンジパーセントを設定し、全幅探索する。

通常、時間枠は1時間から始まり36時間程度に至る1時間毎のステップを計算し、それぞれの36の時間枠に対して、レンジパーセントを0から始まり200パーセントまで5パーセントごとに探索する。

ステップ設定3つの秘訣

レンジパーセントを0(ゼロ)から始めるというやり方には驚かれる方も多いだろう。無意味なようだが抜け幅ゼロから計算を始めてみよう。これは、過去5年間の間に気付いた最も重要な秘訣の一つで、後に「逆張りスキャルピング」の世界に迷い込む為のマジック・ナンバーである。これでは現段階では何のことを述べているのか分からない方が多いと思うが、この通りやると、後々予期しなかった発見がきっとあるはずだ。

次にお勧めするのが5パーセントのステップ設定である。多くの人が細部調査を漏らしてはいけないと考え1パーセント・ステップに設定する。これは落とし穴で、全幅探索では「大まかに」やる、それに対し有力候補の個人面談調査では逆に細かくやる、と言うのが秘訣である。実は、個々のパラメータを細かくやればやるほど時間が掛かるだけでなく、間違った結論に到達する事が多い。私は今回10%ステップも導入して調べてみたが、これでもユニバーサル全幅検索には適しているとの結論だったくらいだ。10%ステップであれば検索速度は当然の事ながら半分近くにまで減少する。

似たような理由で、時間柄も1から始まって36時間まで1時間ステップで探索するよりは、数が大きくなるにつれてステップ数も増加するように設定できると飛躍的に労働効率が上る。例を挙げると、移動平均の調査をするときに、5移動平均と6移動平均では全く異なる結果が出るのだが、105移動平均と106移動平均では何の目立った差も出てこない。105の次は110か115程度の移動平均を探索すべきなのだ。

こうするとやはり探索時間を半分近く圧縮できるはずである。今扱っている時間柄の5~10%となるステップ数にするのが最適であると推測する。このやり方で探索するシミュレーションソフトは未だに見たことが無いが、有ってしかるべきものだと思う。

トレードシグナルの場合

トレードシグナルで実行する場合には、この様に個々の戦略を書き込んだワークスペースを多数用意し、まず手始めにドル円で、ワークスペースに指定されたパラメータ全てをシミュレーションする。トレードシグナル・ワークスペースの作成は非常に簡単で、取引通貨と時間足の長さを指定し、元々備わっているストラテジーをワークシート内にドラッグ&ドロップし、シミュレーションメニューから探索パラメータの下限値と上限値とステップ値を指定すると、全幅探索シミュレーションを直ちに開始することができる。

時間が掛かると言われる全幅探索でも、単純戦略であれば各戦略に付き数分間で計算完了するだろう。私のように67戦略を全通貨で計算し終えるには数時間から1昼夜掛かるだろうが、普通は67もの戦略を全通貨調査する例は殆どない。多くてもせいぜい5つとか10くらいが上限だろう。

しかし本来の全幅探索とは、人間は根気、PCは疲れを知らぬ計算力でただひたすらにありとあらゆる可能性を全て計算するのがその目的である。私がもし若ければトレードシグナルで提供されている全てのストラテジーを全幅調査してみるだろう。いくらなんでも数ヶ月でその作業は完了し、有効なシステムが見つかるはずだ。何と言っても私のやっている幼稚な千鳥足戦略に比べると、遥かに高度な戦略のほうが多い。しかし意外な事に、単純な古くさい取引戦略が時間足の世界では結構有効だという事実も発見され、驚かれるにちがいない。

両打ちに絡む重大問題

次に順張りの優良戦略を探り当てる手順に取り掛かる。その前に重要な準備作業をしなければならない。両打ちの処理である。

全幅探索とは全てのパラメータを探索するので全幅と呼ぶのだが、これは同時に禁断の領域をも探索する事も意味する。順張りシミュレーション最大の禁断の領域といえば、それは間違いなく「両打ち」取引が発生する魔の領域を指す。

両打ちとは「検査している一つのバーで順張りの買いストップと売りストップが両方共レンジ内にある状況。片方打たれていることは確実だが、両方打たれている可能性もあり実は知りえない。どちらが先に発生しているか知り得ないが為に、そのバーでは損失になったのか収益になったのか判定できず、また次のバーに向けて既存のポジションが残ったのか、それともドテンしてひっくり返ったのか、もしくは両打ちの結果ポジションが無くなったのかも知りえない」事を指す。

私のある友人は、この両打ちの事を「往復ビンタを食らう」と呼んでいた。両打ちはシステム取引に限って発生するわけではなく日常の取引でも時折発生し、最悪の損失を計上する事が多い。イフダンで約定と同時に損切りを入れるタイプの注文で取引する人は、常時両打ちのリスクにさらされていると言ってよい。

だからと言ってイフダン注文を入れないと、損切り無しの注文になり、遅かれ早かれリーマンショックのような市況では、即破綻という道を辿る事になる。両打ちはまともな取引行為には必然的現象なのだ。

現実のリアルタイム取引と異なり、取引戦略シミュレーションでは、同一足の内部で買いと売りのどちらが先に付いたかは知りえないので、経理もポジションも把握出来ない事になる。

両打ちの処理は、それを丸ごと見過ごしたり、評価を大きく間違えやすいので、絶対的自信が無い限り、これから書く原則を遵守してほしい。ただしこれは順張りにのみ有効であり、逆張りでは原理そのものがしばしば逆となるので、この点も決して勘違いしてはならない。世の中悪い事だけとは限らない。両打ちの本質を正確に深く理解している人には、後に逆張りスキャルピングの達人になれる可能性が開けてくる。

シミュレーション両打ち取引の処理

  1. 前述したように抜け幅ゼロから計算を始めるのが原因で、殆ど全ての戦略で大量の両打ち取引が発生する。この両打ちはシミュレーションソフトの製作者にも、使用者にも解き切れない難問を突きつける。対処に苦労する概念であるが、幾ら考えても元々適切な答えが存在していない。そこで私の場合は全順張り往復取引の5%以上が両打ちであるようなパラメータの計算結果を一旦全て破棄して順張りランキング検査には提示しないと決めてある。20取引に1度の両打ちなど無視しても構わないではないかと思われるかもしれないが、実はそうでない。実践体験から言っても、統計的に考えても、両打ち一回で、それまで20取引で稼いだ収益の全てが吹き飛ぶ事があるとイメージすれば納得が行くだろう。
  2. その為にはシミュレーションソフトの中に「両打ちを監視して発生頻度を計算する関数」が備わっていなければならない。その様な関数が備わっているシミュレーションソフトは筆者が知る限りは皆無に近いので自作する。小規模なシミュレーションでは、単に気をつけておけば大丈夫かもしれないが、1昼夜を計算に費やすような大規模シミュレーションでは、気を付ける事自体不可能なので、機械的な自動処理の方法を考案する必要がある。
  3. トレードシグナルの場合、両打ちは「一筆書きの原理」で「推測」実行処理され「推測」損益が計上される。この場合、とくに禁断の領域である「極小抜け幅」の探索領域では全く見当違いの収益過大評価が発生する。「一筆書き」の特色はある一点を二度なぞる事はしない点に尽きるが、現実の相場では、価格は上下動を繰り返して、ある一点は何度もなぞるのが普通である。その結果一筆書きよりも両打ちが発生しやすくなる。その違いがとんでもない過大評価を生むのだ。トレードシグナルはその対策として、「仮想価格変動率」という特別な関数を考案し、一筆書きではなく、ある一点を再度なぞりに行くその歩幅を設定する関数として導入してある。二度打ち発生するか否かを、より正確に推測できる仕掛けになっている。
  4. 大変に独創的な工夫といえるが、実は誰もその適正値を知りえない。さらにこのパーセント値が不幸な事に10%にデフォルト設定されているが故に、何も知らないでシミュレーションすると収益過大評価が発生しうる。日足でさえそうなのだから、時間足では間違いなくもっと深刻な過大評価が発生する。そこでこれをあらかじめ収益過小評価となるように設定しておく。こうすると間違ったシステムを最良システムと勘違いするリスクは減少する。この説明を直ぐこのあと図説として少し詳しく提示した。ご覧頂くと一目瞭然だろう。
  5. さて許容範囲として最終的に残った5%以内の両打ちであるが、これ等も損益の正しい計算が実は不可能である。そこで考えうる全ての両打ち損益シナリオを計算し、その中で最悪のシナリオ(すなわち最大損)を採用してそのバーの損益として計上する。この方式で長年やってきたが特に不満は無かった。このように様々な工夫によって、ともかく勘違いの収益を事前に排除してしまうわけだ。トレードシグナルではこのような計算をするスクリプトを作るのが非常に難しそうなので、イフダン注文を入れないように設定したスクリプトも用意して両打ちを回避するように工夫している。
  6. 両打ちは良い取引システムには必然的に発生するので、両打ちの許容限度をゼロ%に設定して完全排除することは逆に間違いである。完璧なものを追い求めるとシステム・トレーディングでは逆に失敗する。

図説:下図:ドル円2010年9月3日1時間足:直近バー・レンジ幅の10%を、時間足引け値から離したところに売買ストップを置く順張りブレークアウトシステム。スリッページを往復1銭に設定。下図の緑と赤の矢印が示すように、ほぼ全てのバーで両打ちが発生する。このシステムは儲かるだろうか?


図説:下図:トレードシグナルのデフォルト設定では超高収益のシステムと言うシミュレーション結果が出る。問題は右端コラム第2段のマネーマネジメント枠内の「仮想価格変動率」であり、10%の設定になっている。これに疑問を抱き20%に変えてみると。。。?(次の図へ)


図説:下図:10%デフォルト設定を、たった10%変えて20%に設定すると下図のような急降下破綻型のシステムだったと言う事が判明する。時間足の仮想変動率は20%でも大幅に低すぎると思われ、この下図の損失でさえ過小評価なのである。真の損失はこれよりも大きい。これが両打ち評価を誤ると待ち受けている怖い落とし穴である。

最優秀取引システム・ランキング付けの手順

ひとつの戦略ワークスペースが計算を終えると、その結果を集計して絶対収益の高いものからトップ20を選択する。67ワークスペースから送られて来たトップ20をひとまとめにしてドル円順張りトップ1340の集計表を作る。ここまでの作業を全ての通貨で繰り返し、出力されたトップリストを全て結合させて全通貨の統合トップランキング表が完成する。7通貨を統合したこのリストには、今回8699のトップランクの取引システムが網羅されていた。単純期待値より小さいのは、ある種の戦略はトップと呼ぶに相応しい条件を満たすパラメータが20揃わなかったためである。「両打ち頻度5%以上排除」のルールでトップクラスが20に満たなかった戦略もあった。

テキストファイルとコマンドプロンプト

ランキングリストを CSV形式(=カンマ分離のテキスト・フォーマット)で出力さえしておけば、エクセルの自動操作マクロやビジュアルベーシックのプログラミング機能を利用して全ての手順は自動化が可能だろう。

私の場合は全ての手順をDOSコマンドとバッチ命令ファイルで自動処理する。DOSコマンドはXPやWindows7ではコマンドプロンプトと呼ばれる。テキストファイルに関しては何でも出来るというほどの強力な機能を備え、出来ない事を考える方が難しい。最大の利点は、単純明快でプログラミング知識の無い素人でも習得しやすい点にある。

DOS時代すなわち黎明期のPCでは、機械言語ファイルとテキストファイルを扱う以外何も出来なかった。当初は色や画像すらも扱う能力が無かったのである。そのお陰で人類の英知がPCテキストファイルの操作性向上に一点集中した時期があった。この頃にDOSコマンドはテキスト環境のプログラミング簡易言語として完成し、原始的単純さと純粋な洗練度において今や誰もそれを乗り越える事が出来ないほどの高みに到達してしまったのである。言わばバロック音楽や初期古典派音楽が美しいのと同じである。

補助的なプログラムを併用すれば、テキストファイルをまるでエクセルのように扱って、計算機能を組み込む事すらも出来る。ファイルの自動結合などは、DOSコマンドだけで簡単に出来る。これ等の機能を活用してシミュレーションを自動化するのである。

こうして候補者リストが完成した。あとは選考に掛けるわけだ。

トップランキング決定の手順

さていよいよミスユニバースの本選が幕開けである。ここで我々が直面する問題は、まさにケインズがあの有名な「美人コンテスト投資理論」を考えていた時の問題と全く同じである。筆者が好きな美人は誰なのか決めるのは簡単だ。残念な事に投資においてはその主観が正解なのではない。「自分ではなく他の一般的人々が、いったい誰を美人と考えるか、それを当てる事が正解なのである」。ケインズの投資理論は彼自身の投資実践によって現実世界でも成功を収めた。著名経済学者が実践投資で本当に成功した稀有の例だと言われる。

投資戦略シミュレーションの場合は、問題が更に難しくなる。今一番美しい人を選ぶのが正解ではない。今だけでなく、未来永劫美しくあり続けるであろう人を選ぶ事が正解なのである。従って今の美しさを評価する関数などがあってもそれほど役に立たない事は明らかだ。結局のところ我々は未来予測に直面しているのであり、これは容易な事ではないなと想像がつく。

ここまではITテクノロジーのロジックに沿って物事を運んできたが、未来を言い当てるロジックなど存在するはずが無く、ここからはロジックと言うよりArts(芸術)と熟練の世界である。

今ここで美人の区別が付かないのでは話そのものが始まらないので、とりあえずそこから謎解きを手がける。ユニバーサル探索結果を開いてみよう。

ランキングリストの項目名

まず、8699行のエントリーをProfit項目で降順に並べ替えて、下に掲げた表のようにする。
項目は次のように読み取る。

なお、戦略名における最初の2文字=通貨(PS=ボンドドル、UJ=ユーロ円)、3文字目=ボラティリティ、4文字目=抜け幅の起点、最後の文字N=ドテン方式トレンドフォロー順張り、となっている。

絶対収益によるランク付け

前章で扱った通貨プロファイルで予想したとおり、絶対収益ランキングではポンドドルとユーロ円が上位を独占している事が分かる。あとで役立つようにとりあえず上位20に緑で色付けをしておく。


(表:絶対収益ランキング表トップ20位)

しかし多くの分析者が信じているように、絶対収益をドローダウンで割った「収益/リスク率」の方が評価関数としては有用性が高い(ただし、ラルフ・ビンスのような一部の著名な分析者はこの見解に賛成しなかった)。何と言ってもボンドやユーロ円はティック表示の絶対収益が高くなりやすいのである。これは価格水準が高いからであり、収益特性が良いからとは言えないだろう。そこでR/Rで降順に並び替えて上位10を提示した。20位まで提示しても同じで、結果はユーロドルとポンドドルの混在リストになり、ユーロ円は上位10位からここで消える。


(表:R/Rで選り分けたトップランキング10位)

ユーロドルかポンドドルが通貨としては最も収益特性が良さそうだと推測できる。次に一番左のコラムFilenameに並んだ戦略を概観してみると、似たもの同士がずらりと並んでいる事が分かる。その次の二つのコラムを見ると、パラメータも殆ど同じである事が分かる。事実これらは似たもの同士である。

コンテストのファイナリスト10人が揃ったところで、個別審査に移る。トップにランクされた取引システムをEUR0N2320(ユーロドル・アール・ゼロ・エヌ2320)と名付ける。これを調べてみる事にしよう。Rを使っているのは恐らくレンジ・ボラティリティを計測しているのだろう。起点ゼロとは何だろう?実は抜け幅の起点に終値を使わない事を意味する。早速トレードシグナルを起動し、このシステムの取引収益騰落線を描いてみよう。まさしくドキドキする瞬間である。

仮想変動率の設定

トレードシグナルで問題視される仮想変動率は念のために最悪の100%に設定しておく。両打ちが発生すると、必ず両方が不利に打たれるシナリオである。

とは言えこれも全く非現実的な絶望型過小評価なので、戦略スクリプトは問題の源であるイフダン・リバーサル注文や通常のイフダン損切り注文を入れないように設計した。どうしても損切りストップを入れたい場合には、固定のパニックストップだけをエントリー値から非常に遠くに入れる。パニックストップは適正化した上で数百から500ピップ離すのでパニック市況以外では打たれにくい。こうすると両打ちの問題はほとんど発生しない。損切りが遠ざかるだけなのである。これもシミュレーションを成功させる重要な秘訣である。


(画像:ユーロドルR0N2320モデル、仮想変動率=100%、スリッページ無し)

上のシミュレーション結果を注意深く観察する。まず、シミュレーションに使用した取引期間は画像の右側3分の1を占める領域(2009年6月以降)である。ここが後知恵による言わば未来を知ってから計算したベストの取引結果である。確かに真っ直ぐな理想的とも言える資産増減カーブだ。

ウオークバックワード・テスト

肝心なのは画像左3分の2の領域(2007年3月~2009年6月)である。この領域はシミュレーションには使われなかった未知のデータ領域である。しかもこの間に多くの取引者を一掃してしまった問題のリーマンショックが含まれている。過去に向かってテストをするのでウオークバックワード・テストと呼ぶ。前章で紹介したウオークフォワード・テストの簡略版であり、フォワードテストをする環境を持っていない取引者にも使える便利な手法である。

この戦略はバックワード・テストに上手く合格している事が分かる。申し分の無い堅固な取引ロジックを発見したらしいと期待を膨らまし始める。

同じ戦略と同じパラメータを今度はポンドドルに適用してみよう。パラメータを何も変えないで他の銘柄に当てはめても上手く行くようなロジックは、そう簡単には見つからないのが普通である。万能型もしくはユニバーサル型のシステムと呼ばれ取引システム製作者の夢でもある。


(画像:ポンドドルに適用、仮想変動率=100、スリッページ無し)

シミュレーションには全く使われなかったデータの事をVirginデータと呼ぶ。直接的な表現を好まない日本語文化圏ではこの邦訳はすっかり影を潜めてしまったが、確かに物事の本質を上手く言い表している。ポンドのデータで取引しても、ユーロドルと同じくらいのティック収益を上げているので、取引ロジックはしっかりしているのだなと確信が湧いてくる。

奮い立つ思いで今度は更にユーロドルの1分、3分、5分足でテストをして見る。スリッページの関係で実際的な意味は小さいのだが、ロジックの検証としては満足の行く結果だった。ここではユーロドル5分足を取引したテストの結果を掲げる。


(画像:ユーロドル5分足、仮想価格変動率=100、スリッページ無し)

理想的とは言えないにしろ、未知データの取引としては受け入れられるパーフォーマンスと言えるだろう。

トレードシグナルの良いところは、ここまで述べてきた全てのデータが、必要な時にいつでも呼び出せることにある。この利便性は大変なものだ。ただし1時間足の場合は2008年4月以降のデータしか呼び出すことが出来ない。そこで最後に、別途用意した2001年以降のデータを読み取らせて、長期のウオークバックワード・テストをしてみた。それが下図である。リーマンショックのあった2008年にデータが欠損している事が分かるが、最後の1年余りだけを使ってシミュレーションしたロジックがこれ程膨大なデータ・テストで有効なのを目の当たりにするのは、私自身初めての体験である。


(画像:外挿データ=未知のデータを2001年から見せて取引させたシミュレーション結果)

以上の様に、全幅探索プロジェクトの第一段階は無事に通過したようだ。次回からはウオークフォワード・テストに触れ、スリッページに絡む様々な難問に取り組み、そして逆張りシステムの全幅探索に向かって乗り出してみる。

第Ⅶ部:システム構築と評価 第3章:ヒストリカル・シミュレーション(2:全幅探索と両打ち) 、 田中 雅 2010年9月15日